微気象解析による霜害リスクの見える化

背景

中山間地域における農業はその持続可能性が危ぶまれています。高齢化によって手放される農地が増えることが予測されますが,これは逆に新規就農者にとってはチャンスとなります。これまで,閉ざされていた農村地域でも積極的に外部人材を受け入れる風土や,農業の大規模化や,先進的な手法を取り入れる就農者が現れ始め,この切り替わりが今後10〜20年にわたって緩やかに進んでいきます。産業の大規模化が進むとともに,少ないマンパワーで効率的に圃場を運営するノウハウの開発が今後必要となります。
 霜害は保険の補償対象となる気象災害の一つであり,近年気候変動の影響で果樹などの生育が早まり,3-4月の朝の降霜による被害が増えています。中山間地に点在する圃場の霜害リスクを評価できれば,少ないマンパワーでの霜害対策が可能となると期待できます。しかしながら,気象庁による予報は日本全体をカバーするため,中山間地農業で利用するには十分な解像度(精度)がありません。そこで,本研究では,気象データを利用して更に詳細な気流シミュレーションを行い,霜害リスクの可視化を行いました。

 霜害に関わる熱の移動形態には,地面の熱伝導,天空への赤外線放射,対流熱伝達の3つがあり,さらに水蒸気が氷になるときの顕熱も無視できません。これらすべての影響を加味した,中山間地域を対象とした3次元気流解析(微気象解析)自体がチャレンジングな課題であり,このような微気象解析は農業基盤技術の高度化につながる大切な研究です。また,近年,AIによる気象予測や,観測データとの同化の技術も,流体工学および気象学の分野で発展しており,これらの技術の地域社会への実装は大きなビジネスチャンスにもつながります。

中山間地域の霜害リスクの見える化

担当者

© Okayama University

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