単一の品種を大規模に栽培する農業において、微生物による病害発生は避けられない。植物病害により、世界では毎年6~40億人分もの食料が失われており、生産や収入への影響は深刻である。この病害対策には殺菌性農薬が欠かせない。しかし、薬剤耐性菌の発生による防除法の枯渇や環境微生物への影響が問題で、殺菌剤使用に関する規制も強化されつつある。
これに対し、植物が本来持っている免疫力を活性化することで防除効果を発揮する「抵抗性誘導剤」が一部で実用されている。これは薬剤耐性菌が出現せず環境負荷が低いため、持続的な農業生産と社会の発展に資する。ただし新剤探索法が限られており、その適用拡大は進んでいない。
我々はこれまでに植物の免疫応答を定量評価する独自技術を開発し、抵抗性誘導剤のシーズを探索してきた。その成果の1つは、植物ホルモンであるサリチル酸を不活性化する酵素を阻害する低分子型の抵抗性誘導剤である。もう1つは、独自技術で有機合成した環状ペプチド型抵抗性誘導剤であり、既存剤が効かないリゾクトニア病に防除効果を示す。
本技術は、食料増産を通じた飢餓の撲滅、持続可能な農業の発展、陸上生態系の保全に資する。
◎本取組は
2021年度岡山大学SDGs推進表彰(President Award)優秀賞を受賞しています。活動発表会の様子は以下の動画でご覧ください。
令和3年度岡山大学SDGs推進表彰(President Award)取組発表会「持続可能な農業生産に資する植物病害防除剤(抵抗性誘導剤)の開発研究」