低温環境は一般に測定時のノイズが抑制されることから化学計測の環境として有効であるが、低温環境下での物質の状態を利用した産業的な応用も進められている。従来から液体窒素温度(77 K、-196℃)付近までの低温環境は従来から産業的応用が盛んであったが、より温度の低い液体水素温度(20 K、-253℃)、あるいは液体ヘリウム温度(4 K、-269℃)付近についても、水素エネルギー利用の観点などから注目が集まっている。こうした背景から、低温環境で使用される小型の機械要素の駆動源として利用することを目的として、振動を利用した小型のアクチュエータ(モータ)の実現を目標とした研究を行っている。このために、圧電素子による超音波領域の微小な振動を駆動源とする様々なマイクロアクチュエータを試作している。このアクチュエータは強磁場環境でも使用することが可能である。これらのアクチュエータが、低温環境で貯蔵・運搬される液体水素を扱うバルブの駆動や、極低温環境を利用する測定装置の試料回転装置などのマニピュレーション機構の駆動源として利用されることを目指している。これにより、水素エネルギー社会の実現や、科学計測を通じて効率的な資源利用へ貢献することが期待される。
4.5 K以下の環境で駆動可能な低温環境用モータの試作事例
低温環境用モータを駆動源とする 流体デバイスの構造例