地球規模の水銀および水銀化合物によって引き起す健康、および環境被害を防ぐために水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)は日本国政府の主導で採択された。締約国において、条約の着実な履行のためには、様々な技術及び制度を複数組み合わせて対策を講じていくことが求められている。これらの対策の有効性を評価するには、現状(条約発効後)と過去(条約発効前)の水銀挙動の変化を考慮したものでなければならない。水俣条約では、締約国会議が条約の有効性評価を行う旨規定されており、条約の有効性評価のあり方についても、日本が主導的に議論をリードする科学的エビデンスを示すことが期待される。現在、どのように有効性評価を行うかについてはまだ定まっていないが、2023年までに条約の有効性評価をする必要がある。そのため、本研究では人為的活動下での挙動を定量的に把握し、ライフサイクルアセスメントの観点から人為的水銀排出による環境影響を評価し、水俣条約の履行を含む将来の水銀排出削減シナリオを定量的評価することによって条約の有効性評価に貢献することが望まれる。