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超高齢社会の到来により、健康増進や疾病予防に食生活の改善が有効手段のひとつであると考えられているが、その科学的根拠や分子基盤は未整備である。一方、食生活の多様化から、肉食・魚介類の順調な消費の伸びに対し、果物・野菜消費量、国内生産量は減少傾向にある。
野菜や果物といった植物性食品の摂取を推奨していくためには、これらの植物性食品の摂取と人の健康の関連を科学的かつ体系的に明らかにすることが不可欠である。我々の研究グループでは、食品成分の機能発現には生体利用性、すなわち消化管からの吸収と代謝排泄のプロセス、体内での蓄積が大きく影響することに注目し、分析化学、生化学、分子生物学などの多彩なアプローチを用いて、食品成分及びその腸内細菌代謝物による生体防御機構の分子機構を解明しようとしている。その一例として、摂取頻度の高いタマネギに由来するフラボノイド配糖体に着目し、この成分の腸内細菌叢による異化で生成する代謝物群が内因性抗酸化機構やアセトアルデヒド代謝機構を活性化することをこれまでに明らかにするだけでなく、代謝物が直接相互作用する生体内の標的分子、その下流のシグナル伝達経路を同定している。
食と健康に関する分子基盤の理解や科学的根拠の確立に貢献するだけでなく、機能性食品開発における新たな指針を提案できる。