窒素は作物にとって必須元素であるとともに、農村地域においては地下水汚染の原因となることがある。農耕地に過剰な窒素が投入されると、最も酸化した化学形態の硝酸態窒素(NO3-N)として作土から溶脱し、地下水を汚染することが広く知られている。ところが、ベトナム中部を流れるフォーン川下流に位置する野菜栽培地帯では、高濃度のアンモニア態窒素(NH4-N)が地下水で検出された。そこで我々は、この地下水がNH4-Nで汚染された原因を明らかにするために、窒素安定同位体比(δ15N)や微生物の機能性遺伝子を用いた研究を開始した。これまでに、地下水や土壌に含まれる窒素について、NO3-N、NH4-N、有機態窒素別にδ15Nを測定する方法を開発し、地下水や土壌のδ15Nを測定した。現在は、narG、napA、nosZなど窒素循環に関わる機能性遺伝子を定量し、深層土壌における窒素動態を明らかにしつつある。
期待される成果
最新の化学・生物分析手法を用いて窒素による地下水汚染メカニズムを解明し、ベトナム中部地域における肥料や堆肥の最適管理法を提案する。