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付着生物による被害の防止は急務の課題である。フジツボなどの付着生物は強力な固着力を持っており、一度付着すると除去するのに多大の労力と費用を要する。1960年代以降、付着生物に対する防汚塗料として有機スズ化合物が多用されてきた。しかし現在では、その強い毒性から世界的にその使用が禁止されている。そのため、効果的で安全、かつ毒性のない環境に優しい付着阻害剤の開発が強く求められている。
本活動では、天然由来の有機化合物を構造基盤として、毒性のない環境調和型の付着阻害剤を開発することを目指している。これまでに、自然界に存在するゲラニオールおよびブテノライドの2つの構造を併せ持つハイブリッド有機分子を設計し、人工的に合成した。これらの合成ハイブリッド分子は強い付着阻害効果を発揮し、かつ毒性を示さなかった。これは、予期した通り2つの活性部位のハイブリッド化により付着阻害効果が増強されたことを示す結果である。今後は、これらの活性分子を用いて実海域でのフィールド試験を行い、付着阻害効果の実効性および持続性を検証し、防汚塗料としての実用化を目指す。実用化が実現すれば、船舶の推進効率の向上や輸送コストの削減などに貢献することが可能となる。
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