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環境問題や災害、紛争解決等、現代の課題に対処するためには、自然科学と人文・社会科学の知見を総動員しなければならない。このため、文理融合をうたった様々な共同研究が実施されているが、それらがどのような「融合」を成し遂げたのかはほとんど検証されていない。
いくつかの文理融合型学際共同研究プロジェクトを具体例に、異分野の研究者が交流する過程をプロジェクト・ドキュメンテーションの手法を用いて詳細に追い、交流にどんな障壁が存在し、そうした障壁がどう克服されうるのかを検証することで、学際共同研究が抱える課題や、知の融合・総合を成し遂げるために必要な要件を考察する。また、得られた知見をもとに、学際共同研究や学際教育のデザイン改善を目指したマニュアルを作成する。
すでにある研究プロジェクトの調査を終え、成果発信に向けた準備を進めている。対象事例としたインドネシア森林域における開発・環境・地域社会に関連する研究では、専門知識よりも、背景知識や現場感覚の違いが交流の阻害要因となっていた。ただし、文理融合型のプロジェクトには、技術革新と社会実装を意図した「理系」主導のものから、パラダイム転換を狙った「文系」主導のものまで、様々なタイプが存在する。また、大学改革が進行している昨今、研究のみならず文理融合教育を評価する必要性も高まっている。今後は対象事例を増やし、事例の相対化を通じて知見を深めるとともに、学際共同研究・教育のありかたやプロジェクトデザインを提言するための実践的なマニュアルづくりに着手する。異分野交流の指針をつくりだすことが期待できる。
担当者