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大気汚染が公衆衛生上大きな健康影響を引き起こしていることはあまり認識されていない。WHOの推計によると、大気汚染により約700万人の死亡が生じたとされ、大気汚染は世界中の死亡における第4位のリスク要因と考えられている。特に、死亡数の中でアジア地域が占める割合は大きく、喫緊の課題である。しかし、大気汚染の健康影響を評価した研究は欧米と比べ、アジア地域では依然として少ない。
我々は大気汚染による健康影響を評価するために、疫学研究を行っている。これまで、大気汚染が循環器系・呼吸器系疾患や肺がん罹患を増加させるということだけでなく、低出生体重児や早産、乳児死亡などを増加させることを示してきた。例えば、東京都で行った我々の研究では、微小粒子状物質(PM2.5)濃度が10μg/m3上昇すると、当日の高齢者の死亡率が0.6%増加することを観察している(Yorifuji et al., 2016)。最近は、韓国、中国、マレーシア、インドなどアジア地域の研究者と共同で研究コンソーシアム(AIRCAP)を結成し、研究を推進している。
本研究から得られる知見は、国内・海外における大気汚染対策・公衆衛生政策に大きく寄与するものと思われる。
担当者