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2022.07.04

裳掛地区の持続可能なまちづくりを目指して

文学部人文学科山田 実乃李さん

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Profile

高知県出身
岡山大学まちづくり研究会9期目会長
趣味はYouTubeでVTuberを見ること・Switchで遊ぶこと

 今回のSDGs Personsでは岡山大学公認同好会「岡山大学まちづくり研究会」の9期目会長である山田実乃李さんにお話を伺いました!
 岡山大学まちづくり研究会(略称:まちけん)は2013年に岡山県内の中山間地域で学生がまちづくりを考え実践する団体として、立ち上がりました。現在では瀬戸内市裳掛地区を活動の場とし、人口減少が進んでいる地域の活性化を目標に掲げ、学習支援や地域イベントの主催といった学生だからこそできる活動に日々いそしんでいます。
 

WIN-WINの関係で行う地域の活性化


――はじめに簡単に活動について教えてください。

 全体ミーティングを週1回毎週日曜日の午前中に京山公民館で行っています。ミーティング内容としては、次に裳掛地区で行う企画の準備の話し合いをしたり、前にした企画の振り返りなどをしたりしています。今私が2回生で会長をさせて頂いているように、うちのサークルは2回生が主体になって企画や運営を行います。1回生から4回生まであわせて38人のメンバーで、裳掛地区のまちづくりを行っています。

――2022年度の企画内容について教えてください。

 春は新入生が入りたてなので親睦を深め、裳掛地区の方に新しくなったメンバーを知ってもらう企画をしました。夏には、コロナで2年ほど行われなかった夏祭りや花火大会が裳掛で開催される予定なので、その機会に出す夏らしい子ども向けの企画を準備しています。そして秋は裳掛地区に秋祭りというのがあるので、その中で今年は初めて中高生と関わる企画を作ろうと思っています。裳掛には小学校はありますが中学高校はなく、わりと離れた別の地域にあるのでそのエリアにまで話を広げるのは初めての試みです。だから中学や高校に「裳掛地区で活動させて頂いておりますまちづくり研究会です!」っていうあいさつから始めるところからなので正直かなり怖いですね(笑)でも中高生をターゲットにした企画は今年の目玉企画なので挑戦していきたいと思います。秋祭りが終わったらお正月にどんど祭りという行事が地域で行われるので小学校の体育館でブースをお借りして子ども向けの企画をしようと思っています。

――活動目的はなんですか?

 私たち大学生が地域に若い力を提供して私たちだからこそできるまちづくりを行います。そして私たちは地域で実際に活動することで普段の学生生活では学べないことを学び、体験させて頂いています。お互いWIN-WINのような互恵の関係の中で高め合いながら、地域の活性化を続けていくことが活動目的だと考えています。

――山田さんがまちけんに入った理由を教えてください。

 私の母が地元の小学校で10年ほどPTA会長をやっていたり、小学生の頃の友人が地域の活性化について学ぶ学部に行ったりと、私の身近なところに地域や子どもと関わっている人がいました。だから私も何かそういうことをやろうかなと思っていたら、入学してまちけんからビラをもらいました。オンラインの体験会に参加してみてとても楽しかったので入ることを決めました。

――なぜ会長になろうと思いましたか?

 結構私がいろんなことに口出ししたいタイプで、わりと今まで仕切り役をしていましたが、特別なにかの長をやったことはありませんでした。大学生が終わったらなにかのポジションに自分の意思でなるということも少なくなると思い、良い機会だしみんなも認めてくれていたのでやってみようと思いました。
 

10年間蓄積されてきたサークルの全てが活かされる

――まちけんの魅力を教えてください。

 私はまちけんがサークルであることが一番の魅力だと思っています。昔顧問の三村先生に教えて頂きましたが、例えば授業で地域を訪問するとか事例を見に行くとかだったら一回行ったらその回で終わりですし、単位をもらえればそれで終わりじゃないですか。でもサークルだったら代替わりはあるとはいえ、継続的な地域との関わりができます。企業や行政とも違って絶対何かの成果をあげないといけないという縛りもなくて、やりたいことや必要なことをみんなで話し合って、それをできる環境が整っていることがまちけんの良いところだと思います。
 私たちが9期生で後輩たちが10期生になるんですが、これまでのまちけんの資料全部が残っているんです。私がまちけんに入ってびっくりしたことはミーティングのやり方がしっかり整えられていて、議事録もスライドも全て残っていることでした。2期生の方がGoogleドライブの共有システムを作ってくださり、みんながそこに資料などを全部残していくようになっているので、「昔は何をしていたんだろう」「これはどうやって解決したんだろう」と資料を探すとちゃんと残っているのでとても助かります。

――OB・OGの方々がこれまで積み上げてきたものに支えられているんですね。

 そうですね。今年は秋祭りで中高生との企画をするにあたって、「本当にニーズに合った企画にできているのか」「ただ私たちの独りよがりに進んでいないか」などの確認を含めて誰かの意見がほしいと思いました。そこで昔の資料を見てみると、過去に一度だけ秋祭りの企画をしていた代がいました。なのでOB・OGの方が一体となった「三村まちづくり研究会」というLINEグループがあるので、そこからその代の先輩と連絡を取ってやりとりさせて頂きました。「まちけんの活動で難しいことや行き詰まったことがあったら気軽に相談してきて良いよ」とみなさん常々仰ってくださっていますし、まちけんのことだけじゃなく進路のことを聞いても絶対に答えてくれるので本当にありがたいです。

――コロナも収束してきたことですしOB・OGの方々と集まって交流会などできたらいいですね。

 やりたいですね!私たちが裳掛で拠点にしている「裳掛あけぼのの家」と名付けられた広めの古民家がありますが、これは初期のまちけんの先輩方が、もう使えなくなっていた空き家を清掃して床を張り替えて使える状態にしてくれたそうです。その裏手には違う代の先輩方が作ったピザ窯があって、自分たちで設計図をネットから拾ってきて、レンガの調達をして作り上げたそうです。火のたき方や焼き方のコツは代々継承されてきていて、まだピザ窯は全然使える状態なんですが、感染対策として飲食が伴うイベントは控えてきました。
 だけどいつか裳掛の方とまちけん歴代メンバーみんなであけぼのの家に集まって、ピザ窯で焼いたピザを食べながら、「もうここがこんなに変わってるんですよ」というようないろいろなお話ができる交流会を開いてみたいですね。
 

温かく迎えてくださる裳掛の人々との継続的な関わり

――ありがとうございます。それでは裳掛の魅力を教えてください。

 私はひとの温かさにあると思っています。まちけんがつくられたときの昔の資料が残されていたので見てみましたが、ほんとうに始動した初期の段階から私たちまちけんを受け入れてくださっています。学生が地域に行って活動することに寛容的で、いろいろと気を配ってくださっていて、外から来た者を受け入れてくださる温かさが一番の魅力だと思います。

――思い出深い活動はありますか?

 昨年毎週水曜日の放課後に、裳掛の小学生の放課後学習支援活動「もかけてらこや」に行っていました。そこでは子どもたちの宿題を見たり、宿題が終わったら一緒に遊んだりします。毎週行っていたので子どもたちが顔も名前もすぐに覚えてくれて、「先生遊ぼう!」ってすぐに声をかけてくれるようになりとてもかわいかったです。でも子どもたちが大人の先生の言うことを聞いても、私が注意したらケラケラ笑ってちゃんと聞いてくれないこともあって、「怒ったり注意したりするのって難しいんだな」って。あとなんで泣いているのか理由がわからない時が一番困ってましたね。子ども同士が言い合いして拗ねて泣かれたりしたら、「もう泣かないで~…」としかできなくて。毎週帰りのバスで「今日はどう対応したらよかったんだろう」と反省していました。
 だけどみんな宿題を終わらせて帰ることができるので親御さんから「助かってるよ」という声を頂いていましたし、大変なこともあるけれど毎週行き続けたことで子どもたちが私を先生として見てくれて、たくさん関わりをもてたことが嬉しかったです。

――まちけんの活動をする上で心がけていることはありますか?

 地元の方々から声をかけて頂いたことにはなるべく応えていきたいなと思っています。特に私たちの代はコロナがようやく落ち着いてきていろいろ動き出しているところなので「前までこんなことしてたけど山田さんの代はどうする?」とか「新しくこんなことをやろうと思うけどどう?」といったお話をよく頂きます。外部の人間である私たちにそうやって声をかけ続けてくださるから、私たちが外から行き続けていることに存在意義があるのだと思います。なので仰って頂いたことにはなるべくのっかっていきたいなと思っています。ただ、だからといって私たちは学生サークルなので言われたこと全部をやっていたらパンクしてしまいます。だから私たちが楽しいことをするっていうことも忘れちゃいけないなと思います。先輩からも「メンバーが楽しめる活動にしないとね」ってずっと言われてきているので、そのためには「頂いた話を継続してやっていけるのか」「みんなが楽しいままサークル活動の一環にできるのか」といったことをちゃんと話し合っていきたいなと思っています。
 

まちづくりに必要不可欠な地域内外のエネルギー

――現場で活動していて少子高齢化や過疎化などのさまざまな地域課題と直面してこられたと思いますが、どんなことを感じましたか?

 「地元の人たちで完結できることなんてもう何もないんだろうな」ということです。裳掛は児童数が年々減ってきていて今年小学校の全校生徒が27人ぐらいで、もう20人きったら小学校がなくなってよそと合併するそうです。中学校は裳掛にないので、地域から最寄りの中学校まで行こうと思ったら自転車で1時間ぐらいかかります。到底自転車通学は無理なので、保護者の方が車で送っていくとなると、それだったら中学校の近くに引っ越した方が都合が良いので、子育て世代もどんどん裳掛から出ていってしまうそうです。残った高齢者の方はマスカットや牡蠣などの地元の産業をされていますが、労働力が足りないので外国人労働者の方を最近受け入れたりしているそうです。もうどの問題を見ても裳掛の中で完結していることってないじゃないですか。なので絶対外に目を向けないといけないことになっていますし、目を向けないといけないことはもう地元のみなさんわかっておられます。地域の中に残っているエネルギーだけでは前には進まない状況だから、私たち外部の人間が入っていくことにすごく意義があって、外の若い人間だからこそ見えてくることやできることというのがあると思っています。
 だから外部の人間が入っていくことは大事なことだと思っていますが、だからといって私たちばかりが盛り上がっていてもうまくいかないのは当然です。地元の方との連携や細やかな意思疎通も大事ですし、地元の方々が外部の人間を受け入れようとするエネルギーも必要です。例えばもうどうにもならないから地元の人が諦めていたら、外の人が入ってきてもただ迷惑に思われるだけだと思います。だけど裳掛の方たちは自分たちの地域に誇りがあって、自分たちの裳掛をとても愛されています。かつ「裳掛をなんとかしたい」というエネルギーがあるからこそ、外部から来ている私たちの力が作用して意義あるものになるんだろうなって。中にあるエネルギーと外からやってくるエネルギーがうまいことかみ合って前に進んでいくことが大事なんだろうなと思います。

――裳掛をこれからどうしていきたいですか?

 「裳掛をもっとよくしていきたい」「子どもたちにいろいろな経験をさせてあげたい」と思ってくださる地域の方はたくさんいますが、いつも私たちが関わらせて頂いている方たちの間のみでそういったエネルギーが収束している感じは否めません。なので私たちが直接関わっていない方たちにも、「私たちが裳掛に行ってこんなことをしています」というのをもっと知って頂き、「自分たちの地域を変えていきたい」というエネルギーを地域全体から起こせるようになったら良いなと思います。

――まちけんをこれからどうしていきたいですか?

 これからもたのしくみんなで続けていくというのがやっぱり一番なのかなと。まあただの現状維持なんですけど(笑)でも会長をやっていて、この組織が10年続いてきたことって本当にすごいなと思うんですよ。裳掛まで電車とバスで一時間かけて行きますが、交通費が高くて、昨年までは往復で一人2000円かかっていました。今年からは市営バスに変わって安くなったので行きやすくなりましたが、それでも今まで何年もの間毎週2~3人がてらこやにずっと行き続けてきたんです。ほかにも年に4回広報誌を出しますが、この広報誌も瀬戸内市の方で印刷してそれから裳掛の全家庭に配らせて頂いています。こういう楽しいだけじゃないことがずっと進歩しながら続いてきていることがすごいなあと思ってて。なのでこれからも大変なことは多いけれど、大変なことばっかりにならないように、みんなが来たいと思ってくれるような雰囲気にして、活動を楽しみながら続けていきたいなと思います。

――最後に学生さんにメッセージをお願いします。

 最近企画をたてるときや悩んだときに思うのは、「大学生らしさを大事にしたことをしたいな」「私たちだからこそできることをしたいな」ということです。私やまちけんメンバーは短い4年間をまちづくりに使おうと思い、この時間に大学生らしさをだして活動しています。まちづくり以外にも大学生だからこそできること、大学生にしかできないことはたくさんあるので、そういうのを見つけて自分にしかないもので誰かの助けになることができたら、そのために使った時間というのはすごく価値あるものになるんじゃないかなと思います。

――山田さんありがとうございました!

 

岡山大学まちづくり研究会のみなさん(左から3番目が山田さん)

© Okayama University

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