在来近縁植物種の共存機構の解明:フィールドと理論の統一的理解を目指して

植物は陸上生態系を構成する最重要種群であり、その多様性の維持機構の解明は持続的な地球環境の維持に不可欠です。一方で野外で普通にみられるような、複数の植物が同じ場所で生育している事実は、実は理論的には当たり前のことではありません。なぜなら、植物が利用する光や土壌栄養、花粉を運ぶ送粉者などは限りある資源であり、植物種同士は潜在的にそれらを巡る競争関係にあると考えられるからです。

本研究で扱ったツユクサ属一年生草本ツユクサとケツユクサは、田畑や道端に普通に生育し、生育環境・開花時期・送粉者を完全に共有しています。なぜこのようなよく似た花、つまり強い競争関係にあることが期待される花たちが、同所的に共存できるのか、従来の理論では全く説明することができませんでした。本研究では、野外観察や人工授粉実験を組み合わせてツユクサとケツユクサの自動自家受粉という仕組みが競争を軽減しうることを発見し、これらの知見を踏まえた数理モデルを構築して様々なシナリオを想定したシミュレーションを行うことで、自動自家受粉を含む繁殖システムの進化が近縁植物種の同所的な共存を促進しうることを示しました。

植物種同士の競争関係や共存メカニズムは、その全貌の理解にはまだまだ明らかにすべきことがたくさんあります。野外で見られる複雑な現象を整理し、一般測を探求し続けることから、生物多様性の保全や、持続可能な生態系の管理を考える上で需要な知見が得られることが期待されます。


 

図1.植物2種が同じ送粉者種を共有する場合、送粉者を介した繁殖干渉が強く競争排除を促進するため、同所的な共存が困難になる。

図2.ツユクサ(上段左)とケツユクサ(上段右)の花。花形態は酷似しており、ごく近傍で同時期に開花する(下段)。

担当者

© Okayama University

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